【ザトウクジラと泳ぐ】ホエールスイム体験記 in 奄美大島
「海に飛び込んだ瞬間、目の前に現れた巨体に、言葉を失った」
船からの合図とともに海へ飛び込むと、すぐ目の前に現れたのが、体長14m以上あるザトウクジラ。
穏やかな海面を吹き抜ける潮の音と、広大な海を優雅に泳ぐその姿に、一瞬で心を奪われた。
2025年1月。
「奇跡の9連休」と言われた年末年始が終わり、いつもの日常が戻ってきました。
連休明けの仕事ほど憂鬱なものはありませんが、そのときのボクはむしろウキウキしていました。
なぜか?
そう、この週末の3連休(1/11~13)に、奄美大島にて人生はじめてのホエールスイムを控えていたからです。
奄美大島では、1月から3月にかけて、体長約13~14mのザトウクジラが繁殖・子育てのために訪れます。
ザトウクジラはその大きな体格だけでなく、力強い尾びれや広大な海を優雅に泳ぐ姿で見る人を魅了します。
運が良ければ、ブリーチと呼ばれる迫力満点のクジラのジャンプが観察できるかもしれません。
また、メスへのオスの求愛行動や、小さな子クジラが母親に寄り添って泳ぐ可愛らしい光景に出会えるのも、この時期ならではの楽しみです。
中でもホエールスイムは、クジラを水面から観察するだけでなく、同じ海を一緒に泳ぐことができます。
- 目の前に現れる巨大な身体
- ゆったりと、しかし力強く、広大な海を自由に泳ぐ姿
- 親子クジラの仲睦まじい様子
- 人と重なる部分を感じさせるクジラの様子
上記すべてが、心を揺さぶるような特別な瞬間を与えてくれます。
クジラと泳ぐ体験、一生に一度はするべき!
そこで、この記事では、奄美大島にて人生初のホエールスイムを体験したときの様子を中心に書いていきます。
具体的には、以下の内容をまとめております。
- ホエールスイムの参加条件や注意点
- ホエールスイムの1日の流れ
- 人生初ホエールスイムを体験したときの様子
これからホエールスイムをやってみたい人向けに、参加する際の様子や注意点を詳しく解説していくので、ぜひご参考ください。
【冬季限定】奄美大島ホエールスイムについて
ここでは、奄美大島ホエールスイムについて以下の内容を解説しております。
- 今回お世話になったショップ
- ホエールスイムへ参加する条件・注意点
- ホエールスイム1日の流れ
順番に解説していきますね。
今回お世話になったショップ【ダイブスピーシーズ奄美】
今回のホエールスイムでは、奄美大島北部にある「ダイブスピーシーズ奄美」さんにお世話になりました。
ダイブスピーシーズ奄美は諏訪 誉(すわ ほまれ)さんと雅世(まさよ)さんのご夫婦2人で経営しているショップです。
普段は主にファンダイビングを中心に開催しておりますが、1月~3月はホエールスイムを受け付けております。
先日(2024年10月)、ファンダイビングに参加したときに取材させていただいたショップさんです。
ダイブスピーシーズ奄美について詳しく知りたい方は、実際に取材して書いた記事をご参考ください。
上記の記事では、
- ダイブスピーシーズ奄美の基本情報
- スタッフの紹介、アクティビティなど
- ダイブスピーシーズ奄美の特徴
- 魅力、どんな人におすすめか
- 所有ボート(ODYSSEY号)のご紹介
- 1日(3ボート)のスケジュール
上記の内容を主にご紹介しております。
実際に現地スタッフに聞いてみたこともまとめておりますので、気になる方はぜひご参考ください。
ザトウクジラの魅力とは?
ダイブスピーシーズ奄美のスタッフである誉さんが、ザトウクジラの魅力を熱く語ってくれました。
ザトウクジラの魅力は、人と重なる部分があるところです。
ザトウクジラは母性が強く、好奇心が旺盛で、観察してて非常に面白いとのこと。
例えば、同じ母クジラでも経験豊富な個体とそうでないので、子クジラへの接し方がそれぞれ異なります。
若く経験が浅い母クジラは子供に対して神経質です。常に子供のそばに寄り添って、目を離さないように見守っている姿が見られます。
一方、歳を取った子育て経験豊富な母クジラは、子クジラがある程度自由に動くことを許しています。
なので子クジラが少し離れた場所へ行っても焦らず観察し、冷静に見守っている様子が観察できるとのことです。
クジラの親子が寄り添ったり、少し離れても安心した表情で見守る母クジラが観察できるという部分は、ボクたち人間と通じる「親の愛情」を感じますね。
ザトウクジラが人と重なる部分があるという意味がよくわかるお話でした!
ダイブスピーシーズ奄美の公式サイトのブログを遡ると、過去のホエールスイムをしたときの様子がアップしております。
ホエールスイムへ参加する条件
参加条件は、奄美クジラ・イルカ協会が定めたルールに書いております。
(8)スイム参加資格は、ダイビングCカードライセンス以上の保持者、フリーダイバーライセンスおよび同等資格保持者、船長が認めた上級者とする。
また、ダイブスピーシーズ奄美さんのホエールスイム参加条件を記載させていただきます。
ホエールスイムはダイビングライセンス保持者であればご参加いただけます。シュノーケルに自信のない方はホエールスイムはご遠慮ください。
*ライセンスがない場合でもスキンダイビング講習などを受けている方などでスキンダイビングに慣れている方であればご参加いただけます。
まとめると、
- ダイビングライセンスを持っている人
- スキンダイビング講習を受けている人(スキンダイビングライセンス保持者)
が参加条件になります。
他のショップでも、「Cカード保持者」を参加条件としています。
ホエールスイムに参加する際の注意点
ここでは、ホエールスイムに参加する際の注意点を解説しております。
- ボート上の防寒対策をする
- 船酔い対策をする
- クジラとの接触注意
- 奄美クジラ・イルカ協会で禁止していること
順に解説していきますね。
ボート上の防寒対策をする
「奄美は南国の島だし、1年中温かいでしょ?」と勘違いする人が多いですが、冬の奄美大島は普通に寒いです。
確かに東京よりかは比較的暖かいですが、日によっては最低気温10℃になることもしばしば。
さらに、天候次第では風が強かったり、太陽が雲に隠れて日差しがないことも多く、体感温度は予想以上に低く感じるかと思います。
海の上では、寒さがより一層身に染みます…
特に、最も寒さを感じやすいのが、エントリー後の濡れた状態です。
ウェットスーツの上にボートコートを着ても、風が吹くとぶるぶる震えてしまうほど。
水温は暖かく、あまり寒さを感じなくても、ボートに上がってからが一番寒く感じます。
そのため、貸し出しのボートコートだけでなく、ネックウォーマーや手袋、ニット帽も準備しておくことをおすすめします。
首や耳を保温するだけでも、寒さは大きく和らぎます。
冬の奄美大島で快適にホエールスイムを楽しむためには、南国のイメージに惑わされず、「冬の防寒準備」を万全に整えておくことが重要ですよ!
船酔い対策をする
ホエールスイムは、基本的に1日中船の上にいます。
海に入る時間より、ボート上にいる時間の方がはるかに長いので、船酔いしやすい人は酔い止め必須です。
今回のホエールスイムも、6時間ある中で海に入っている時間は合計30分~1時間くらいだったと思います。
ちなみに、ボクがおすすめしているのが、アネロンという酔い止め薬です。
詳しくは、以下の記事で詳しく解説しております。
以下の記事で、「誰でも簡単にできる船酔い対策」をご紹介しております。
クジラとの接触注意
クジラはボクら人間の数十倍デカい生き物です。
想像するのは容易だと思いますが、接触してしまうと大ケガにつながる恐れがあります。
特にテールの威力はハンパないので、気を付けましょう。
今回お世話になったダイブスピーシーズ奄美のスタッフ(誉さん)から注意点として聞いた話です。
ザトウクジラ自体、好奇心が強い動物と言われていますが、中でも子クジラはかなり好奇心が強く、人間に興味を持って遊んでくれることが多いです。
しかし、その好奇心の強さからか、ごく稀に子クジラが誰か1人をロックオンしてぶつかってこようとすることがあるみたいです。
接触しそうと思ったら、横に逃げれば当たることはないですが、ヒレが当たっただけでもかなり痛いとのこと。
ちなみに誉さんも1回だけロックオンされたとき、腕にヒレが接触したときのことを「鉄板が当たったくらい硬かった」と話してました。
これも滅多にないことと話していましたが、注意点として紹介しておきますね。
奄美クジラ・イルカ協会で禁止していること
ここでは、奄美クジラ・イルカ協会で禁止されていることを記載します。
- ロングフィン、バラクーダの使用禁止
- 他ショップでゲストとの接触事故があったこと、クジラへのアプローチが変わったこともあり、ロングフィンの使用が禁止になった。
- ハンドグリップの長いGo-Proの使用禁止
- GoProが禁止というわけではなく、ハンドグリップの長いものを使用するのが禁止。(短く持っていればOK)
棒の長いものを使用したとき、クジラが嫌がる行動が多く見受けられたり、他のカメラを撮られている方々の邪魔になってしまいやすいことから、禁止になった。
- GoProが禁止というわけではなく、ハンドグリップの長いものを使用するのが禁止。(短く持っていればOK)
上記ルールを守った上で、ホエールスイムを楽しみましょう。
ホエールスイムの1日の流れ
前日に電話にて集合時間と場所を伝えられる。
あらかじめ水着を着用してから向かう。
レンタカーの方は港へ直接集合。
港へ到着後、ボート内で準備開始。
準備が整い次第、出港。
クジラを探す旅に出る。
クジラを見つけたら、様子をみてスタッフの合図を待つ。
合図があれば、準備してエントリーする流れになる。
帰港中に、着替えたい人は着替えて帰る準備をする
次の日もある人はホテルへ、清算する人はショップへ送迎してもらう。
【動画付き】人生初ホエールスイム体験記
ここからは、実際にボクがホエールスイムに参加したときの様子や感じたことを書いていきます。
今回は、主にGoProを使用したので、動画中心にご紹介できればと思います。
ボート上でもホエールウォッチングを楽しめる!
いざ、クジラ探しの旅へ。
ボートが出港して約10分くらい。
さすがにまだ見つからないだろうと、屋根のあるところでゆったりしていたら「クジラを見つけた!」という声が。
「え?はや!」と思いながら、外に目をやると、
いるわ。
ドデカい背中が見えるわ。
呼吸するためなのか、こちらの様子をうかがっているのか、水面に出てきてくれていますね。
立派なテールも拝めました。
実際撮った動画もご紹介しますね。(手振れや水滴などであまり上手く撮れていませんが…)
(上記はTG-6で撮影)
大きなテールを思いっきり蹴り上げてくれました。
迫力がハンパない…(水滴が邪魔ですが)
クジラのダンス(GoPro11で撮影)
複数のクジラが身体を横にして、胸ビレを水面に叩きつけています。
リラックスしているときに見られるアクションとのこと。
アイドルに手を振るように、キャーキャーしていますね。
ザトウクジラって本当にサービス精神旺盛な生き物であることがよくわかります
ホエールウォッチでも十分に楽しめますので、シュノーケルができない人でもおすすめですよ。
最初は怖かったが、クジラが目の前まで来てくれたときの感動がすごい!
ホエールスイムでは、クジラを見つけたらすぐにエントリーするのではありません。
まずは船上でクジラの行動を観察して、遊んでくれそうだったらエントリーします。
スタッフからエントリーの準備をするように伝えられたら、急いでマスクに曇り止めを塗り、フィンとカメラを持ちます。
船の先に足を出すように座り、待機する。
船からの合図とともに、一斉にエントリー。
ざぶーん
(このとき思いっきりシュノーケルから海水を飲んで、少しパニックになってたことは秘密です。)
慌てずに周りに続いて、泳いでクジラがいるところへ。
どうやら、足元を泳いで回っているらしい。
足元は、こんな感じ。
海の底が見えません。
透明度が悪いからなのか、そもそもが深いのかわからないが、ずっと見ていると思わず底へ吸い込まれそうになります。
東京スカイツリーにある「透明の床」に立ったときと似たような、ゾワっとした感覚がありました。
- 「物を落としてしまったら絶対に取りに行けないだろうな」
- 「このまま自分自身が吸い込まれてしまったら終わりだ」
- 「突然、何者かに底へ引きずりこまれたらどうしよう」
ボクのクセではありますが、余計な想像をしてさらに恐怖感が増しました。
深い海でシュノーケルした経験がなかったので、正直最初はかなり怖かったですね。
そんな足元に、うっすらドデカい影が見えますね。
透明度が悪く、視認しづらいが、確実になにかが足元にいる。
とりあえずカメラを向けるが、ちゃんと撮れているかわからんな。という状態。
動画はこちら。
水中の深いところで泳いでいる姿がうっすら見えますね。
ずっと水中を見ていると怖くなってくるので、なんとか周りの人達がどこにいるか見て落ち着かせようと必死でした。
水面で格闘すること10分。
ついに、うっすらしていた影がはっきり映ってきました。
2頭のクジラとご対面!
約3~4m先まで近くに来てくれました!
このときクジラと目があった気がしました。大興奮です。
動画ではわかりにくいですが、クジラ達はとっても穏やかで優しい目をしています。
何かを語りかけるわけでもなく、ただ静かにこちらを見つめているその瞳は、まさに人の目のような穏やかさと温かさを感じます。
「クジラは人と重なる部分がある」
そんな話をダイブスピーシーズ奄美の誉さんから聞きましたが、このとき、それがとてもよく理解できた気がします。
一瞬の出来事でしたが、目があった瞬間はまるで時間が止まったような感覚に包まれました。
心の奥深くに何かが届くような、なんとも言い難い不思議な感覚でした。
やがて、彼らの巨大な体が水中を優雅に泳いで遠ざかっている様子を眺めていると、いかに自分が小さな存在かを思い知らされます。
クジラの存在感のデカさを間近で感じられる、貴重な体験でした。
このときには既に、海への恐怖なんてどこかへ行ってました。
クジラもボク達人間を観察している?
ホエールスイムでは、クジラを見つける度に、様子をうかがってから海へエントリーしてアプローチする流れになります。
しかし、その過程で何度も翻弄され、「クジラも人間を観察しているのでは?」と考えたくなる瞬間が何度もありました。
例えば、先ほどまで船近くにいたのに、エントリーできる状態まで準備するとどっかへ行ってしまったり。
逆に、海へエントリーしたものの、周りにクジラが現れず、諦めてボートへ戻ったら、そのすぐ後ろで顔を出してきたり。
さらに驚かされたのが、誰もカメラを向けていないときに、突然複数のクジラが同時にブリーチング(写真でよく見るクジラが水面から飛び上がる行動)をしたときです。
その見事なジャンプのタイミングは、まるでこちらの行動がわかっているかのようでした。
何度クジラに驚かされたかわからないくらい行動を見透かされており、人間側は弄ばれていました。
こちらもクジラの様子を観察していましたが、クジラ達もボク達人間を観察しているのでは?と思った次第です。
【まとめ】冬季限定の奄美大島ホエールスイムはかなり寒いが、クジラに出会うことでしか味わえない感動がある!
今回の記事では、奄美大島にて人生初のホエールスイムを体験し、その様子をお伝えしました。
ホエールスイムの時期は1月~3月とかなり寒い時期です。しかし、それ以上にクジラでと過ごす時間は、他では味わえない感動が待っています。
「ホエールスイムにはリピーターが多い」という話を聞きますが、その理由が今回の体験でよくわかりました。
ボクもまた来年、この素晴らしい体験を求めて再び奄美大島を訪れたいと考えています。
皆様もぜひ、この感動を体験してみてはいかがでしょうか?
大自然の中で、クジラと心が通じ合う瞬間がきっと待っていますよ。